企業における博士輩出について

学生さんは夏休みですね。新社会人の夏休みですが、最近の 3 年で一番長い休みを頂けそうです(笑)まとまった時間でしっかり息抜きしてこようと思います。

企業で博士をとる機会について

先日同業・類業に就いている友人とお話したときに、企業が博士をとらせるケースの有無についての話題に及びました。ぼくのイメージでは、「一昔前まで論文博士で学位を取らせるケースがあったが、現在はあまりない」というもの。事実、学生時代の出身研究室でも企業からの(論文)博士取得者は十数年前を境に途絶えており、ごく僅かに社会人博士課程として、年に数回研究結果の報告とディスカッション機会ののち、博士号を取得した方がいらした程度でした。

・・・ここで論文博士という制度について簡単に触れておきます。wikipedia『博士』の項目より。

日本における博士号の取得

博士号の取得を志した場合、博士論文提出までに学会での発表を行い、博士課程在籍中に2編から3編の査読付き投稿論文を執筆するといった業績が博士の学位審査を受ける要件となっている場合もある。こうした要件は、大学・研究科・専攻・教室・研究室などによって異なる。

博士課程で学位を取得した場合は「修了」として認定されるが、就職などのために学位を取得する前に中途退学するケースも多い。所定の在学期間(3年間)以上在学し、修了に必要な単位を全て取得してはいるものの、学位論文だけが完成しないまま就職することも多く、こうした場合「満期退学」又は「単位取得退学」と称する[4]。在学年数を越えて大学院に留まる場合は研究生として在籍するケースもある。また、2005年の文部科学省中央教育審議会において文部科学大臣への答申の中で博士課程に社会人コースを設置し、社会経験にて実績のある人物の場合は1年間の在籍期間中に学位取得を志すことができるようにすべきだとされた。つまり、大学院の博士課程に社会人コースが設置された場合、1年間の修学期間で博士号を取得することが可能となる。

課程修了による博士号を課程博士、論文提出のみによる博士号を論文博士と呼び分ける。大学が博士号を授与した場合、授与大学ごとに通し番号が付けられて文部科学省に報告されるが、課程博士には甲1234XX号のように「甲」が、論文博士には乙1234XX号のように「乙」が付けられる。ただし、一部の大学においては学位記上ではこれらの区別がなされず、両者の通し番号が記載されていることもある。また、大学によっては、所定の期間在学し所定の単位を取得して退学した後、一定期間のうちに論文を提出することにより課程博士を与える制度を設けていることもあるが、同様の場合に論文博士として試験の扱いを変える(一部免除する)大学もある。

なお、中央教育審議会は2005年6月13日の総会で大学院改革に関する中間報告「新時代の大学院教育-国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて-」をまとめ、文部科学大臣に報告、その中で、「論文博士」について、「諸外国の制度と比べ日本独特の論文博士は、将来的には廃止する方向で検討すべきではないかという意見も出されている」と述べる一方、反対意見も紹介した上で、「論文博士については、学位に関する国際的な考え方や課程制大学院制度の趣旨などを念頭にその在り方を検討していくことが適当である」としている。 (資料第1章第2節3 課程制大学院の制度的定着の促進 を参照。)


ざっくり言うと、論文を書いて認められればもらえる博士号(乙種になるらしい)・・・です。昔は論博の審査基準として筆頭著者論文が XX 報とか、そのくらい要求されるものだったそうですが、やがて段々審査が甘くなったところもあったようです。引用部分最後にもあるように、諸般の事情で廃止の方向に動いているようです。課程博士での学位取得者の中には、論博が同じ博士と思われたら困る!というヒトも・・・。

社会人でのドクター取得事情は様々

長い前置きでしたが、こういう事情もあり、修士出の研究者に博士号を取る機会を企業が与えるケースは実際には少ないだろうと考えていました。

(論文の内容)      (取得手段)

通常業務での成果     論文博士
          ×
業務に直接関わらない成果 課程博士(社会人ドクター)

上記の中で、所属している企業および大学の双方にとってマッチングがあれば取得機会があるようです。例えば・・・

・産学共同の企画において、基礎研究を大学で行う場合に、課程博士として国内留学させるケース。
・ひと段落した(=せざるをえなくなった?)研究成果の報告機会を博士号取得に利用するケース。


などなど。
なにより、こういう機会にめぐり合い、且つ成果を挙げることが必要という点はどこに所属しても共通。所属(会社あるいは部署)によってはどうやっても博士をとる機会はないとか。

そもそも企業が社員に博士号を取得させるメリットって?

企業側のメリットとはなんだろうか?スキル・技術・考え方などを外部からも取り入れるきっかけ?外との繋がりをもっておくこと??なんなのか、よくわかりません。
ただ、企業としてもケアしなくてはならない点があるわけで(例えば博士取得できなかったりしたら一大事)最近は博士課程修了者をたくさん採用しているので、数もどんどん減るかもしれないですね。

まとめ

そんなわけで、企業に入ってから博士号を取得するチャンスは「無くはない」といったところで、運によるところが大きいと考えます。
企業もそんなことするくらいなら最初から博士をとりますし、実際どこの企業も博士をたくさんとっていると思います。研究畑で長くやっていきたい!という場合には、やはり課程博士を取得して就職したほうが得策だろうと思いました。