日常の説明責任に真摯に向き合ってプレゼン力を鍛える

今日の要旨:これから科学・技術への継続的な投資を国に求めるには、投資の必要性を一般のヒトにひろく・なんとなく理解してもらう必要がある。その上で国にアピールして説得力をもつに足るコンセンサスを形成していくことが重要だ。そのためには、まず「科学」とか、わかりにくい、小難しいものをふつうのヒトに理解してもらう努力を各自がしなきゃいけない。手始めに、自分のやってることは身近なヒトに理解してもらっているか?トレーニングは、意外なところでできるかもしれない。尤も、ぼくはそれ以前に、もっと一般常識的な部分を補強する必要がありますが。。

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連休中の twitter では先、日の事業仕分け結果と、今後科学者・研究者がとるべき行動などについて活発なつぶやきが起こっていた。その内容を大まかにまとめると、「研究者は科学・技術へ投資するメリットについて、具体的な形で世間にアピールすべきだった」、という内容ではないかと思う。


アピールの方法として
1.テレビのようなメディアを介した発表(Initiation Phase)
があって、
2.それを引き金として起こるお茶の間での会話(例えば子供が親に「どゆこと?」って聞く。Propagation Phase)
となるだろう。

両者を行う場合、それ相応のプレゼン技術が必要になるものと考えている。
ここでいうプレゼンというのは、例えば学会で行われるような、小難しく、細部にまで気を遣った、専門用語が乱れ飛ぶ(要はフツーのヒトがテレビで見たら、チャンネルを変えちゃうような)プレゼンじゃなくて、ニセ科学的のテレビ番組に代表されるような簡略、インパクト重視で、大まかな理解をしてもらうためのプレゼンであろうと思う。(http://d.hatena.ne.jp/sheepwolfskin/20091113 にも書いた)

プレゼン内容や方法は、相手のバックグラウンドに応じて変える必要がある。けれど、通常細かい内容をプレゼンする(例えば学会、研究室内、社内 MTG)場合には、聞き手もそれ相応の知識を持っていることが殆どだ。必要以上の配慮をしなくても分かってもらえる、ツーカーの雰囲気がある。
一方、そのような細かい内容を、フツーのヒト、例えば、近所の子供にわかってもらうことは非常に難しい。前提として要求される情報を相手は何一つもっていないのだ。と同時に、こちらも手持ちの「噛み砕き表現」を持ち合わせていないことが結構多い。しかも、それを意識する機会は殆ど無い。


この「小難しいことを相手に伝える」場面は、じつは日常の意外なところに隠れている気がする。例えば、「今日も仕事なの?」とか、「パパなんて今日おでかけできないのー?」とか、「えー、また?もう、培地交換って何なの?!いつも何してんの?わたし細胞どっちが大事なの?」とか、そんな日常のすれちがいをきっかけに、自分が普段していることを話す機会だ。大げさに言うと、こういった説明責任が生じた場面で、真のプレゼン能力が鍛えられるのではないかと考えている。手短に、さしあたり納得してもらうことが目的。ちょっと興味あるなー・・・を、へぇー、なんかおもしろそう。に変える、そんなプレゼン。
このような齟齬が生じる場面は、相手に自分(の仕事)についてのバックグラウンドが乏しい場合が多いので、とてもいい練習になると思う。「何をしてるのか、全然わかんない、こいつ何してんだろ?」を「へー、そんなことしてんだ、よくわかんないけどなんかおもしろそうね」に持っていけるようになったら、自分の科学についてプレゼンする能力は及第点に達していると判断していいのかなと考えてる。これはなにもサイエンスに限ったことではないけど、たんなる趣味と違って、説明に前提が必要なので、なんとなくの理解が重要と思っている。



もっとも・・・
「何してんだろ?」が「そっか、まあ、どーでもいいや」になったときは、それがプレゼンの問題なのか、プレゼン者自体にたいする興味の問題か、わかりませんけれど:笑 今回の科学・技術の問題に戻ると、まずは、身近なヒトのちょっとした興味の扉をひらけるような、そんなプレゼンができるようになりたいなーと思うし、そのためにもっといろんなことを知りたいなというのが当面の目標です。