秘密基地で未来をえがく

週に数回、他のヒトが誰も入ってくることのない部屋で実験をしている。秘密基地みたいな感じのところだ。チームリーダーと上司と、一緒に手を動かす数少ない機会である。(余談だけれど、チームリーダーが手を動かすってのは会社ではなかなかないことだ。)一日中その部屋に篭りっきりになるので、オフレコな話やしょうもない話、今やってる仕事をどうやって広げていくか、新規テーマを立ち上げるなら・・・といった話をフランクにできる場だ。


先週は新規テーマの話で盛り上がった。今の仕事だけでは解決できない問題をクリアーできるターゲットについて。それを狙うには技術的な難しさがあって、通常のテーマ提案以上にいろんな部署を巻き込む必要がある。そういうのを正規なテーマとして立ち上げていくには、しっかりした叩き台(=今の仕事での成果)が必要となってくる。提案できるようなデータを蓄積するにはまだ時間がかかるだろう。


今の仕事は、今年度中にひとつの節目を迎え、実験動物を使った研究にとって第4コーナーが見えてくる。事業会社だから、プロダクトになるかどうかはすごく大事で、その是非がはっきりするのはまだまだ先の話だ。けれど、プロダクトが出るにせよ出ないにせよ、次のターゲットを何にするか、これは同業各社は毎度頭を悩ませているところではないかと感じている。新人でもそう感じるくらいだから、ベテランにとってはよりストレスのかかる状況だろうと思う。実際、今やってる領域についても、もうきついかも、と思ってる研究者もいれば、まだできることはある、と考える研究者もいる。うちの上司はもちろん後者だ。


隠居してる場合じゃないと上司は言ってる。企業にとって研究開発は、不確実性の極めて高い未来への投資で、うまくいかなかったもの(それは仕事の殆どだろう)は評価されない。けれど、最初に未来を描くこととそのルートマップをつくって開拓していくことは研究者の特権だ。年を喰っても夢を見られること研究者として大切な資質だし、単に夢みるだけでなく、自分たちの仕事を自分で作るということも考えていかないと、もうじき研究を仕事にして生きていくことはままならなくなるだろうと僕は思う。この不況下、企業は多数の研究者を雇って初期段階から研究開発を行うことに拘るよりも、有望なモノをベンチャーなどから導入したり、会社を切ったり貼ったりするというのがトレンドだ。


いろいろ楽しめる秘密基地での実験に、もっといろんなものを持ち込んで、こねくり回したいなーなんて思いながら土曜の夜が更けゆく。仕事は自分で作っていく。ヘンな表現になるけれど、夢のある写実的な絵が描けるようになるのが目標。