エコナに関連したもろもろ

もう 10 日も前の話になりますが、話題になっていますね、エコナ

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20090927

今回のエコナ問題で気になったのは以下の2点。

☆問題はどこにあるのか?企業は何を明らかにすべきか?消費者は何を要求すべきか?

☆数字で、Fig. でものを言いたい。

以下、ニュース引用。

エコナ」出荷停止 発がん物質に変わる恐れある成分

花王は16日、「体に脂肪がつきにくい」とうたった特定保健用食品食用油エコナ クッキングオイル」について、体内で発がん性物質になる恐れがある成分が含まれていることがわかったとして、エコナ関連商品(12種類59品目)の出荷を停止すると発表した。スーパーなどには販売自粛を要請。返品を求める消費者には代金を返す。 花王によると、問題の成分はグリシドール脂肪酸エステル。体内で分解されると、発がん性物質グリシドールになる可能性があるという。同社の分析によると、エコナにはグリシドール脂肪酸エステルが一般的な食用油の10〜182倍含まれていた。

 同成分は意図して製品に配合されたものではなく、油のにおいを除くために加熱する工程で、副産物としてできたという。エコナ事業担当の安川拓次グループ長は「商品の安全性に問題はないが、不安を感じる方がいるため、安心して食べてもらえるようにするまで出荷を止めることにした」と説明。同成分の含有量を大幅に減らし、来年2月にも再び販売するとしている。

という事情で健康エコナは市場から一時撤退となりました。実際、スーパーでは回収が終わっていて、もうありませんでした。一時期いろいろあった内部告発ではなく、会社側からの申告で、グリシドール脂肪酸エステルの含量を見直します!ってところは消費者としては好感持てる部分でした。10-180倍ってかなり幅大きいですが・・・


プレスリリースを見た

今月 24 日の段階で、花王株式会社は ver.6 の広報を行っていて、そこにはこうありました。

○今、家庭で使っているエコナは食べても大丈夫ですか? 長年使ってきましたが、このまま使っても大丈夫ですか?
大丈夫です。お召し上がりいただけます。
花王は、エコナ(意図せず副生した、グリシドール脂肪酸エステルを含む)の安全性については、特定保健用食品(トクホ)申請時から、外部試験機関による世界標準の試験を通じて多くの評価を積み重ねており、発がん性を含め、安全性に問題のないことを確認しております。


○安全なのに、販売を自粛するのはなぜですか?
花王は、消費者の皆さまにお届けする製品に関して、安全性の確保はもちろんのこと、安心してご愛用いただくことを事業の基本姿勢としております。
安全性に問題はありませんが、エコナには、製造の過程で、意図しない微量のグリシドール脂肪酸エステルが一般食用油よりも多く副生されていたことが、新たにわかりました。そこで、消費者の皆さまに、より安心してお使いいただくために、製品中に含まれるグリシドール脂肪酸エステルを一般食用油と同等レベルに低減することとし、それまで一時販売自粛を行うことと致しました。


グリシドール脂肪酸エステルに、発がん性はないのですか?
グリシドール脂肪酸エステル」について、発がん性を含め、現時点で安全性への懸念を科学的に示す報告はありません。ただ、この「グリシドール脂肪酸エステル」が分解して、発がん性のある「グリシドール」に変わるかもしれないという可能性について、近年ヨーロッパを中心に議論がなされているため、一般食用油と同等レベルに低減することと致しました。

・・・人によっては心配になってしまいますね。2つの問題があって

☆件の成分の発がん性に関する指摘はヨーロッパで最近なされた。(エコナ発売当初は問題視されてなかった。)
☆その成分がエコナには多く含まれている。

だから、勿論安全性は確認しているけれど、念のためその成分の含量を減らすまで、発売やめます、ごめんなさい。→炎上

ということだとぼくは読み取りました。

ここまでがエコナ問題のタイムラインを追ったものです。

以降は一連の出来事を通してぼくが思ったことなどになります。


つまり、今回のエコナ問題には、「体に脂肪がつきにくい」の関与成分(この成分のおかげで体に脂肪がつきにくいんですよ!というもの)ジアシルグリセロール(DAG)は今のところ直接の関係はないということになります。(DAG 高含有油をつくるから発ガン物質がたくさん入るのでは?というつっこみはナシで)


1.特定保健用食品の認可はどうなるのか気になる

エコナ回収の日から数日後、YOMIURI ONLINE を見ていて、こんな記事が掲載されていました。

エコナの特保許可取り消しを、消費者団体が集会

 花王特定保健用食品(特保)の食用油エコナ」関連製品の販売を自粛している問題で、主婦連合会などの消費者団体は25日、東京都内で緊急集会を開き、「安全性を保証できず販売を自粛しているエコナが、特保なのはおかしい」として、特保としての許可の取り消しを求めた。

 これに対し、集会に出席した花王事業グループ長の安川拓次執行役員は「販売自粛をしているのは、商品を改良するための一時的な措置。エコナは国際的にも安全性が認められている」と説明した。

 エコナの安全性を評価している内閣府食品安全委員会の北條泰輔評価課長は「消費者は心配している」として、できるだけ早く結論を出す意向を示した。特保の許可を担当する消費者庁の相本浩志食品表示課長は「食品安全委員会の結果を踏まえて、考えたい」と話した。

消費者団体による販売のさし止め要求はよく聞く話ですが、許可剥奪という要求はめずらしいなと思いました。(どちらかというと、安全性に関する徹底的なリスク・コミュニケーションを要求してほしいと思いました。しているでしょうけど)

福島消費者相も、調査結果次第ではトクホ認定取り消しの構えとか。

今回のような場合、つまり「関与成分」の効能効果自体が問題で販売自粛したわけでない事例では、特定保健用食品表示許可は取り消されうるのか?ということです。逆に言えば、グリシドール脂肪酸エステル含有量が減っても「体に脂肪がつきにくい」であることを追試験で示す必要があるか?ということになります。認可に時間かかるトクホ関連事業にとっては大きな問題になるのではないかと思います。他の商品でも、マイナーチェンジ毎に再申請が必要になったりするきっかけになるかも?


2.競合商品への影響はあるのか?と思って見てみたら

競合として思い浮かぶのは日清オイリオのヘルシーリセッタ。こちらはDAGでなく中鎖脂肪酸を関与成分とし、体脂肪がつきにくいって文言でトクホをとっています。やはりウェブサイト上で対応がありました。超短期ですが、売り上げにも影響しているのでしょう。

平素は弊社商品に格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。
このたび花王株式会社よりニュースリリースされました「エコナ関連商品の一時販売自粛」報道により、お客様から当社商品に関するお問い合わせを多くいただいております。
日清オイリオ食用油は安全性に問題はございません。引き続き安心してご使用いただけます。
なお、当該報道に対しまして社団法人日本植物油協会がホームページにて見解を公開しておりますのでご参照下さい。

で、日本植物油協会とやらのサイトを訪ねました。以下引用です。

. 花王(株)の販売自粛について

花王(株)のエコナ・クッキングオイル(ジアシルグリセロールを高濃度に含む食品)につきましては、食品安全委員会において、発ガン性物質であるグリシドールに体内で変換される可能性があるグリシドールエステルを高濃度に含むことが明らかにされ、同委員会は、エコナ・クッキングオイルの安全性についてなお検討を重ねる必要があるといたしました。

今回の販売自粛は、このことに対する不安から同社が自主的に講じられた措置であると理解しております。

2. グリシドールエステルの安全性議論について

グリシドールエステルについては、人体に取り込まれたときの安全性に関する科学的知見を得ることが何よりも重要であります。
このため、食品安全委員会はこれらに関する知見を早急に得るよう政府に指示されたところであります。

3. 普通の植物油の安全性について

エコナ・クッキングオイルは、自然界には見られないほどの高濃度のジアシルグリセロールを主体とする製品であり、普通の植物油とは全く異なる物質です。
普通の植物油は、人類の長い食経験を通じて安全であることが確認されており、安心してお召し上がりいただきたく存じます。

かなり強い論調です。たしかに植物油を十把一絡にされては困りますもんね。

ちなみに会員企業一覧 http://www.oil.or.jp/kyoukai/ichiran.html

花王は入っていませんね。

この場合、協会の発表へのリンクでもいいんですが、当該トクホ商品のグリシドールエステル量を発表するとかすれば、消費者の安心感も増すような気がします・・・。

ということで、一連の出来事で

・消費者は、当該商品に付与された権利の剥奪よりもリスクコミュニケーションを要求したらいいのに・・・。(そのほうが他社もがんばる)

・企業は、文章ではわかりにくいんで数字を示したほうが消費者にもわかりやすい。例えば、競合社はうちの油はグリシドールエステルは一般のサラダ油並みです!とかの棒グラフ示すだけで安心感は変わる。

エコナがトクホを取り消されたら結構業界(トクホ含めて健康増進系の食品産業)はたいへん。

と思いました。


今回のエコナにまつわる出来事はトクホの関与成分そのものに関わる問題ではありません。しかし今回のことで、トクホ市場全体に負の影響がでてしまわないか、気になっています。あやしい成分を摂取させられてるんじゃねーのと思うヒトも多いと思いますが、たしかトクホの関与成分になるには食経験(いままでヒトが食べてきた成分であること)がないとダメだったはずです。こういう機会をきっかけに、特定保健用食品ってそもそもなんだよ、とかそういうことが消費者に再認識される機会になればいいなーと思います(ぼくも含めて・・・)。

なにより、言うまでもないですが、運動したり食べすぎをやめたり、そういうことが一番大切だと思いますね。こういうのに、頼り過ぎない!



明日から月曜日。また一週間がんばりましょう!!