firm specific skill に関する諸々はアカデミアにおいても当てはまる

シューカツ中の後輩(M1)から、「習得している実験手技」(理系の技術職・・・研究職とか開発職に募集する場合、エントリーシートの記入欄にこれが大抵ある)に何を書いたらいいのかわからないという話をされました。古典的な手技がセールスポイントになるのか、彼には疑問のようでした。特別なことは書く必要がない=特別な手技を持ってるわけじゃない ので、できることをフツーに書けばいいんじゃね?と返事をしておきました。うちはビンボーラボということもあり、ラボのルーチンはかなり古典的な技術を使ってやることが多いのです。だから、最新鋭の機器を使ってミクロな現象まで解明できちゃう!的なものはラボメンバーの誰も持ち合わせていないんです・・・最新鋭ええのぅ。


で、修論スライドの暫定版完成の合間の息抜きに、このいいんじゃね?の根拠を考えてみることにしました。


科学の世界は日進月歩、昨日までわからなかったことが今日わかる、そんなところです。科学の世界で起こる諸々の疑問に答えられるような技術がどんどん開発されていて、技術をもってないところは落ちぶれるのが常です。ところが、この技術というのが曲者で、機械・装置を持っていることが手技より重要である場面も少なくないようです。極端な話、「そのラボのその機械を使わせれば右に出るものはいない」けど、「よそでは全然使い物にならない(ならなかった)」という人もいる、ということです。研究者としてのセールスポイントがあまりに特化しすぎた技術、言わば Labo-specific な技術を持っている場合、よほど卓越したものを持っていないとダメなのかもしれません・・・。このことは、firm specific skill = 社内では通用するけれど、社外に出ると通用しない(そんなのあるのか・・・)の話に共通する部分かと思いました。よって、修士課程なら、それが古典的な手技であれ何であれ、色んなことを満遍なくやっていることに負い目を感じる必要はないんじゃないか、そう考えました。ただ、博士課程の場合は、かなり尖った特性を持っているほうが強みになるかもと考えました。僕は持っていないのでわかりませんが。あとは頭で勝負?


このあたりは社会人になってから実感することもあるのかもしれません。


また、ちょっと話は変わりますが、この Labo specific skill ってのがなかなか曲者で。この技術はウチにしかないから、とか、この機器を使いこなせるのはウチのラボだけだ、とか、Labo specific skill の聞こえよさを使ってよそでは使いにくい人材=自分のラボの奴隷(?)を確保するという手口もあるそうです。恐ろしすぎる。よって、以前にエントリした研究室選びのポイントd:id:sheepwolfskin:20081204:1228410917 に加えて、

・ここでしかできない技術とか、ここでしか使えない機器ってありますかー?
・じゃあ普段ルーチンでどんなものを測ってるんですかー?

という質問をしておくのがいいかもしれないですね。あまりに一分野に集中しすぎてる場合は結構なリスクを負う覚悟が必要かもしれない。



なんにせよ、後輩にはがんばってほしいものです。あと研究も少しだけがんばってほしい・・・。