経団連の中途半端な「倫理憲章」が学生を一層シューカツに向かわせている

今年の就職活動を見ていて、気になったことをば。例によってバイオ系の事情です。


最近、ひとつ下の後輩たちが研究室にあまり来ないあたり、いよいよ就活戦線も佳境に入っているのかなと感じます。よその研究室では内々定獲得したヒトもちらほらとか。今年度は経団連の「大学卒業予定者・大学院修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」を遵守するようにと企業に通知があった模様で、例えば従来秋口から採用活動に入っていた製薬大手は選考時期を遅らせているようです。

倫理憲章とは・・・以下経団連 HP より。

企業は、大学卒業予定者・大学院修了予定者等の採用選考にあたり、下記の点に十分配慮しつつ自己責任原則に基づいて行動する。

1.正常な学校教育と学習環境の確保

在学全期間を通して知性、能力と人格を磨き、社会に貢献できる人材を育成、輩出する高等教育の趣旨を踏まえ、採用選考活動にあたっては、正常な学校教育と学習環境の確保に協力し、大学等の学事日程を尊重する。

2.選考活動早期開始の自粛

卒業・修了学年の学生が本分である学業に専念する十分な時間を確保するため、選考活動の早期開始は自粛する。まして卒業・修了学年に達しない学生に対して、面接など実質的な選考活動を行うことは厳に慎む。

3.公平・公正な採用の徹底

公平・公正で透明な採用の徹底に努め、男女雇用機会均等法に沿った採用選考活動を行うのはもちろんのこと、学生の自由な就職活動を妨げる行為(正式内定日前の誓約書要求など)は一切しない。また大学所在地による不利が生じぬよう留意する。

4.情報の公開

学生の就職機会の公平・均等を期すとともに、落ち着いて就職準備に臨めるよう、企業情報ならびに採用情報(説明会日程、採用予定数、選考スケジュール等)については、可能な限り速やかに、適切な方法により詳細に公開する。

5.採用内定日の遵守

正式な内定日は、10月1日以降とする。

6.その他

高校卒業予定者については教育上の配慮を最優先とし、安定的な採用の確保に努める。

後輩談によると、化学系は例年よりやや遅めの 1 月くらいに書類選考の締め切り設定があり、食品業界は例年並だそうです。加えて、倫理憲章を遵守している企業群と特に守っていない企業群に二分できるようです。さらに、例年より選考ステップの進行が遅く、書類選考〜内々定が出るまでの期間を延ばす事によって倫理憲章を守っている風にしているみたいです。(例えば、1 月上旬に 1 次選考があり、通知が 1 週間後、2 次選考は 2 月末。内々定は卒業学年の 4 月に出せばオッケー!みたいな)

昨年、いわゆるシューカツ生だった僕の視点から見て、今年はこの 3 年間で一番学生が就活に時間を割いているように見えます。勿論、今年度に関しては「みぞうゆう」の(笑)不況が背景にあるのでかなり割り引いて考える必要ありですが、その理由のひとつに


経団連が「倫理憲章」を中途半端に企業に強制したしわ寄せ


が学生に来てしまっていることがあると思うんですよね。共同宣言していないところは例年通りやってます。宣言したところ全部が守っているのかについても?です。企業側は、よさそうな、使えそうな学生が欲しいのは当たり前なので、選考のスピードや時期はさじ加減が必要でしょうし、責められる筋合いはないように思います。倫理憲章の運用の中途半端さが問題であるように感じます。


そもそも、「学生は、倫理憲章を守っている守ってないで企業を選ぶわけではない」という当然の前提に立てば、現在の経団連の策を実行することで就活期が延びてしまって、学生が学業・研究に励めるわけはない。結果、従来よりもシューカツ優先(=バイオ系に至っては研究なんてやってらんない)状況になることは想像に難くないと思うのです。倫理憲章の存在意義であろう①は、自身の存在によて全否定されている現実が、現場にはあります。


どうせやるなら徹底的に企業に守らせるか、何も介入しないか。もしくは選考開始から選考終了までの期間を制限することで対処するか。しがない学生にはそんなことしか思いつきませんが、ただ言えることとしては、今年の就活生は学業どころではなさそうですよー、ということです。